民泊から旅館業へ:許可の前提が変わったときの収支と出口

民泊から旅館業へ 運用・出口・現場知見
はじめに

こんにちは。
BANYUの新村です。
宿泊事業の物件は、表面上の利回りや売上だけを見るのではなく、「どの許可で運営しているのか」を確認することが重要だと思います。許可の種類によって営業日数や収益の上限が変わり、制度変更によって今後の運営や売却にも影響します。物件の収益性だけでなく、制度と出口まで含めて考えることが大切だと思います。

速攻要点整理
  • 許可・届出の種類で、収支の上限が変わります。住宅宿泊事業(民泊新法)は年間180日までという上限があり、旅館業にはありません
  • 前提はすでに動いています。大阪市の特区民泊は2026年5月で新規受付を終え、国は同年7月、自治体が条例で民泊を区域ごとに止められる考え方を示しました
  • 稼働率と単価を管理できている事業者もいる。賃貸とは性質の違う事業運営になる
  • 許可は事業者に付きます。旅館業は2023年12月から、事業譲渡でも許可を取り直さずに引き継げるようになりました

宿泊事業として運用している物件では、許可の種類が収支の上限を決めます。

そして制度の前提は、固定ではありません。私自身が金融機関を回っている中でも、「民泊・ホテル系は規制や特区の終了で、今後は難しくなる」という見方を担当者の方から直接聞きました。融資の側から見ても、宿泊事業は「前提が動く分野」として扱われています。

一方で、私たちがお会いした民泊の運用者の方からは、「面白いし、小さいビジネスを組み立てる楽しさはある。ただ、思ったほど儲かっていない」というお話も伺っています。

何が変わると、何に効くのか。収支と出口の両面からご説明します。

許可の種類が収支の天井を決める

まず、制度の違いからです。

宿泊事業には複数の制度があり、それぞれ営業できる日数と必要な要件が異なります。住宅宿泊事業(いわゆる民泊新法)は届出の制度で、年間の営業日数は180日までです。自治体の条例で、区域や期間がさらに絞られていることもあります。これが売上の天井になります。弊社の営業がお会いした宿泊事業者からも、180日の運用で利回り8%ほどの事例がある、という話を伺っています。

その一方で、旅館業の許可を取得すれば、日数の上限はなくなります。ただ、用途地域、建物の構造、消防設備などの要件が加わります。「日数の天井を外す代わりに、要件が増える」。この関係を先に押さえておくことが重要です。

前提が変わると、既存の物件も対象になる

次に、冒頭でお伝えした「前提が動く」話です。

実際に、前提はもう動いています。大阪市では、特区民泊(国家戦略特区の制度)の新規受付が2026年5月29日で終わりました。すでに認定を受けている施設は営業を続けられますが、部屋を増やすための変更の申請も、同じ日で受付が終わっています。

さらに2026年7月には、観光庁が自治体に向けて、条例で区域を定めて民泊を新しく始められないようにする「ゼロ日規制」についての考え方を示しました。すでに弊害が出ている地域では、既存の民泊も対象になり得ると報じられています。

金融機関の方とのお話の中でも、特区の制度が終わることは論点になっていました。その場合の選択肢の一つが、旅館業への切替です。ただし切替には設備の追加や用途上の確認が必要になるため、全室を一度に移すのではなく、部屋ごとに段階的に進める形も考えられます。なお大阪市では、特区民泊の受付終了後に旅館業の許可を取って同じような事業を始める事業者が増えることを想定し、騒音やごみなどのトラブルを防ぐための条例改正が進められています[7]。切替を考える場合は、こうした要件の変化も先に確かめておくと安心です。

既存の物件をお持ちの場合、営業では次の2点を先に確認することをお勧めしています。
①今の許可・認定・届出が、いつまで有効か。自治体の条例がどう動いているか
②切替が必要になった場合、工事費用がいくらかかるか
「まだ大丈夫」ではなく、「いつまで大丈夫か」で持っておくことが重要です。

図1 許可の前提が動く。日程表で持っておく
図1 許可の前提が動く。日程表で持っておく

数字が読める事業では、利回りが出る

厳しい話が続きましたが、運用が軌道に乗っている事業者もいます。

弊社の営業がお会いした宿泊事業者からは、平均すると稼働率は90%ほどで、客室単価も毎年上げていけている、という説明がありました。

ただし、これは事業としての運用です。賃貸のように管理会社へ委託して任せきりにできる性質のものではありません。冒頭の「思ったほど儲かっていない」という方と、軌道に乗っている事業者との差は、物件の差というより、稼働率と単価を能動的に管理できているかどうかの差だと私は見ています。ここが成立の前提です。

出口は「会社ごと」になることがある

最後に、出口の話です。ここが通常の収益物件と最も違います。

許可は物件そのものではなく、事業者に紐づきます。だから物件だけを売却すると、買主は改めて許可を取得しなければなりません。取得できるとは限りません。

そのため、許可付きの案件では、会社ごと譲渡するスキームが検討されることがあります。株式譲渡の形にすれば許可を維持したまま事業を引き継げますが、法人の債務や過去の経緯もそのまま引き継ぐことになります。

なお、旅館業は2023年12月の法改正で、事業譲渡でも、あらかじめ自治体の承認を受ければ、新たに許可を取り直さずに営業者の地位を引き継げるようになりました。承認は、譲渡の効力が生じる前に受けておく必要があります。ただ、住宅宿泊事業の届出や特区民泊の認定は、この改正の対象ではありません。出口を考えるなら、どの形で引き継げるのかを、購入時点で確認しておく必要があります。

現場目線

実際に金融機関や宿泊事業者の方とお話しする中で、宿泊事業は制度や自治体の方針によって事業性が変わりやすいと思います。だからこそ、現在の許可・認定だけでなく、将来的に継続できるのか、旅館業への切替が可能なのか、どの程度の費用が必要なのかまで確認することが大事だと思います。収益性とリスクの両方を見ることが重要だと思います。

まとめ

宿泊事業では許可の種類が収支の上限を決め、住宅宿泊事業には年間営業日数の上限があります。大阪市の特区民泊の受付終了や、国が示した「ゼロ日規制」の考え方のように、前提はすでに動いています。既存の物件も切替の検討対象になり、設備や用途の要件が伴います。
稼働率と単価を管理できている事業者もいますが、賃貸とは性質が異なる事業運営です。出口では、許可が事業者に紐づく点に注意し、承継の方法を購入時点で確認しておくことが重要です。
宿泊事業の物件は、金融機関の見方も含めて前提が動きやすい分野です。ご検討中の方は、お気軽にご相談ください。


免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・税務助言・投資助言ではありません。制度、税制、金利、審査条件、各種運用ルールは変更される可能性があります。宿泊事業に関する規制は自治体により大きく異なります。個別案件については、不動産会社、金融機関、行政書士、税理士、弁護士等の専門家にご確認ください。


引用元:

この記事を書いた人

この記事は、BANYU営業担当の新村純平が執筆しています。現場で動いて集めた一次情報をもとに、立地や物件ごとの特徴を多角的に捉えてお伝えします。
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この記事を書いた人

この記事は 櫻井 洸太 が執筆しています。建築・テレビ業界・営業の経験で得たフットワークの軽さを武器に、収益不動産のこれからをご提案していきます。 執筆者紹介はこちら

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