高利回り地方RC、それでも売れない理由――「利回り14%」の罠と出口の真実

中上級者が知るべき「プロの境界線」

「利回り14%超のRCがある。これは買いか?」という相談は、地方の収益物件を探す投資家からよく寄せられます。しかし現場では、高利回りをうたうRC物件が長期間売れ残っているケースが少なくありません。問題は利回りの数字そのものではなく、それが「どんな構造で成立しているか」にあります。

この記事では、積算評価・融資可否・出口難易度という3つの視点から、高利回り地方RCを買う前に確認すべき判断軸を整理します。購入を検討中の方はもちろん、融資の見立てや出口を先に確認したい方にも参考にしていただける内容です。


この記事で分かること

  • 表面利回りが高い物件が「なぜ売れないか」の構造的な理由
  • 銀行の積算評価と収益価格の乖離が引き起こすこと
  • 買主に融資が付かないと売り手にも影響が出る仕組み
  • 出口から逆算して購入可否を判断するための視点

知っておきたい用語

  • 積算評価【せきさんひょうか】: 銀行が「この土地と建物は今いくら?」と計算する評価方法。たとえばマンションを解体して更地にしたときの土地の値段+建物の残存価値を足した金額のイメージ。物件の購入価格より積算評価が低いと、銀行が「担保として足りない」と判断し融資しにくくなる。

なぜ表面利回り14%超でも買い手がつかないのか

表面利回りが高い物件は、価格が低いか家賃収入が多いかのどちらかで成立しています。地方RCで高利回りが出ている場合、多くは「価格が低く設定されている」から――つまり、他の要因で市場価格が抑えられているサインです。

表面利回り(グロス利回り)は「年間家賃収入÷物件価格×100」という計算式で出る数字です。これは管理費・修繕費・空室損・税金などを含まない「最大値に近い理論値」であり、実際に手元に残る収益を示しているわけではありません。

人口減少が進む地方都市では、現在の賃料が将来も同水準で続く保証はなく、高い表面利回りが「現状の一時的な数字」にとどまるリスクがあります。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(2023年12月公表)によれば、多くの地方都市で2050年にかけて人口が大幅に減少すると見込まれており、賃貸需要の縮小は長期的なトレンドとして意識しておく必要があります。

また、いくら表面利回りが高くても、借り手を探すのが大変でトラブルも起きがちとなれば、魅力的な物件とは言えません。流動性の低いエリアでは入居付けのコストが高くなり、見た目の利回りと実態が乖離します。

さらに重要なのは、利回りが高い物件が「買い手に選ばれない理由」です。融資が付かない物件では、買い手は現金で購入できる人に限定されてしまい、売却のハードルが高くなります。高利回りは魅力的に見えても、融資がつかない物件は市場に流通できる買い手の数が激減します。

落とし穴

業者が提示する「利回り14%」は、満室・現状維持・経費ゼロを前提にした数字であることが多いです。空室率・管理費・修繕積立・固定資産税を差し引いた実質利回りは、表面利回りよりも大幅に下がる場合があります。「お得に見える数字」と「実際に手元に残る収益」を分けて確認することが最初の一歩です。

チェックリスト

  • 表面利回りの計算根拠(満室想定か現況か)を確認したか
  • 現在の空室率と過去の空室履歴を確認したか
  • 管理費・修繕積立・固定資産税を加味した実質利回りを試算したか
  • 賃料が市場相場と比べて高すぎないか確認したか
  • エリアの人口動態・賃貸需要の傾向を調べたか
  • 利回りが高い理由(価格が低い理由)を特定できているか

1分で要点整理

「利回り14%と聞くと魅力的ですが、その数字は費用を含まない理論上の最大値です。実質利回りを計算し、エリアの需要・空室リスク・将来の賃料変動を加味した上で判断する必要があります。高利回りは『売りやすいサイン』ではなく、逆に『売れ残っている理由がある』サインである場合があります。」

判断基準

  • 利回りの計算根拠が「満室想定」なら → 現況稼働率・市場賃料との乖離を必ず確認する
  • 利回りの計算根拠が「現況満室」なら → その賃料が市場相場と整合しているかを確認した上で次のステップへ
  • エリアの人口が継続的に減少傾向にある → 賃料維持の再現性と空室リスクに特に注意する

銀行の積算評価が収益価格を下回ると何が起きるのか

積算評価が物件の売買価格を下回ると、銀行は「担保として足りない」と判断し、融資を絞ったり断ったりします。これが地方RC高利回り物件で頻繁に起きる「融資詰まり」です。

銀行によって物件の評価の仕方は異なります。大きな違いとしては、積算評価か収益還元法かで物件評価の出方が変わり、ローンの年数についても耐用年数から築年数を引いた残存年数なのか、残存年数にプラスして年数を組めるかどうかで差が出ます。

積算評価(原価法)は「土地の評価+建物の評価(再建築費×残存耐用年数)」で計算します。RCの法定耐用年数は47年であり、銀行が積算評価に使う建築単価の目安はRC造でおよそ20万円/㎡が多く、耐用年数についても銀行によって若干のストレスをかける場合があります。

地方では土地の路線価・公示価格が都市部と比べて低いため、積算評価に占める土地部分の金額も小さくなりがちです。土地値という観点では、更地実売土地値であるかどうかの確認が重要であり、建付地の場合は更地にするコストを減算して考える必要があります。

一方、収益還元法(収益価格)は「賃料収入÷還元利回り」で算出します。還元利回りは地域・築年数・利用状況などで変わり、地方その他都市では9.5%程度とされる場合もあります。還元利回りが高いエリアほど、同じ賃料収入でも収益価格は低く算出されます。

高利回り物件の場合、一見すると「収益価格は高く出るのでは?」と思われがちですが、賃料水準が市場実態より高く設定されている場合、銀行はその賃料を割り引いて計算します。また空室リスクの加算や経費控除を行うため、収益価格が想定よりずっと低く出るケースも少なくありません。

結果として積算も収益価格も売買価格を下回る場合、銀行は「一部しか貸せない」という状況になり、買い手が自己資金を大量に用意しなければ購入できなくなります。

落とし穴

「積算評価が高い物件なので安心」という説明を鵜呑みにするケースがあります。積算評価が売買金額以上出ているからといって、それだけで良い物件とは言えません。積算が高くても、収益価格が低かったり、エリアの実勢地価が路線価を大きく下回っていたりする場合、実態と乖離している可能性があります。

チェックリスト

  • 積算評価の計算内容(土地単価・建物単価・残存年数)を確認したか
  • 収益還元法での評価額も確認したか(銀行によって重視度が異なる)
  • 売買価格と積算評価・収益価格の三者の関係を把握しているか
  • 想定している銀行が「積算重視」か「収益重視」かを事前に確認したか
  • 土地の路線価ベース評価と市場実勢価格の乖離を確認したか

1分で要点整理

「積算評価と収益価格の両方が売買価格を下回る場合、銀行は融資を絞ります。地方RC物件では土地評価が低くなりやすく、さらに収益価格も銀行の還元利回り設定次第で大きく変わります。評価方法を確認せずに購入を進めると、融資が思ったより出ず、買主が集まらない出口問題に直結します。」

判断基準

  • 積算評価が売買価格を大きく下回る → 銀行が「担保不足」と判断しやすい。自己資金比率・現金買い前提になるかを確認する
  • 収益価格が積算評価を上回っている → 築年数が進んでいるケースで多い。銀行がどちらを優先するかで評価額が変わる点を要確認
  • 両方が売買価格を上回っている → 融資が付きやすい条件。ただし市場実勢価格との乖離も別途確認する

地方RCで「融資が出ないから売れない」構造をどう読むか

地方RC物件で売却が難航する最大の理由のひとつが、「買主側に融資が付かない」という構造です。売り手が物件を手放したくても、買い手候補が資金調達できなければ取引が成立しません。

銀行の融資引き締めにより「融資が出ない」状況では、裏を返すと所有者(売り手)は「買主の融資が付かないから売るに売れない、仮に売れたとしても地方物件は特に相場が下がっており、残債以上ではまず売れない」という状況になりえます。

この「売れない構造」を図式化すると次のようなケースが起きやすくなります。

  • 売却価格の水準 < 積算評価 < 購入価格(かつ残債に近い)
  • 買主候補が融資を引こうとしても、銀行評価が売価を下回るため融資が付かない
  • 現金買いできる投資家は値引きを要求する
  • 売り手は希望価格では売れず、長期間市場に残り続ける

このような物件では、新たな融資を組むのが難しく、売却しようにもローンのつきにくい地方の築古物件には買い手がいない状態になりがちです。

さらに、RC造物件は築年数が経過すると配管修理や外壁塗装工事など、多額の修繕コストがかかります。地方RC造物件は大規模物件も多く、そうなるとさらにコストがかかってしまうため、融資が付きやすいという理由だけで購入してはいけません。

この「融資が出ないから売れない」構造は、購入時に「将来の買主がどういう人で、その人に融資が付くか」を考えていなかった場合に後から顕在化します。B3-2「買主融資から逆算する保有期間設計」でも触れているとおり、保有中の運用だけでなく、売却時の買主属性と融資可否を出口設計に組み込むことが重要です。

落とし穴

「今は満室だから問題ない」という判断で購入し、数年後に売ろうとしたときに買主が見つからないケースがあります。現在の稼働率や収益性が良好でも、「その物件を買える人が市場にどれだけいるか」という流動性の問題は別軸で存在します。

チェックリスト

  • 想定する将来の買主像(個人投資家か法人か、融資派か現金派か)を設定しているか
  • その買主が使いやすい金融機関が対象物件に融資を出しやすい条件かを確認したか
  • 出口時点での残存耐用年数と融資可能期間の試算をしているか
  • 現金買い前提になった場合、どの程度まで価格を下げれば売れるかを試算しているか
  • 同エリア・同規模・同築年の物件が直近で売買成立しているか確認したか

1分で要点整理

「地方RC物件が売れない核心は、買主側に融資が付かないことで市場参加者が極端に絞られる点にあります。現金買いできる投資家は全投資家の一部にすぎず、その人たちは当然ながら強い値引き交渉をします。出口で売れる物件かどうかは、将来の買主が融資を引けるかどうかで決まる面が大きいです。」

判断基準

  • 将来の買主が融資を引けそうな物件 → 市場流動性が確保されやすく、出口の選択肢が広い
  • 将来の買主が現金買い前提になりやすい物件 → 売却価格に強い下押し圧力がかかりやすい。長期保有を前提とした収益シミュレーションで判断する
  • 同エリアの成約事例が少ない → 流動性が低いエリアと判断し、出口難易度を高めに見積もる

高利回り物件を買う前に見るべき出口逆算のポイント

購入判断の最後の軸は「出口」です。B3-1「出口戦略の教科書」で整理しているとおり、「誰に・いくらで・どの時点で売るか」を購入前に仮定しておくことが、地方RC特有の出口リスクを管理する基本です。

出口逆算で確認すべき主なポイントを整理します。

① 出口時点での積算評価と残存耐用年数 RCの法定耐用年数は47年。たとえば現在築20年のRCを購入し、10年後に売ろうとすると、出口時点では築30年・残存17年となります。この時点でどの銀行がどの程度の期間・条件で融資を出すかを事前に試算しておくことが必要です。

② 将来の売却価格の考え方 収益物件の売却価格は、出口時点の賃料÷還元利回りで大まかに算出されます。還元利回りがエリア特性で高く設定される地方では、賃料が維持されていても売却価格が思ったより低くなるケースがあります。また人口減少が進むエリアでは、将来の賃料水準が下がるリスクも考慮が必要です。

③ 売却先の想定 「誰に売るか」も具体化しておく必要があります。地域の実需層・別の投資家・法人ユーザーなど、売却先の候補によって価格帯や条件が変わります。融資が付きにくい属性の買主が多いエリアでは、現金買い前提で出口価格を設定することが現実的な場合もあります。

④ 長期保有前提か売却前提かの切り分け 出口の方向性として「売却益を取りにいく」のか「キャッシュフローを長期で享受する」のかによって、許容できる購入条件が変わります。売却前提の場合は流動性と融資可否が最重要。長期保有前提の場合は修繕コスト・将来の賃料変動・空室率を中心にシミュレーションします。

落とし穴

業者の説明が「現在の収益性」に集中しており、出口時点の話が出てこない場合は注意が必要です。将来の売却価格・買主属性・融資付きやすさを「今の話」と切り離して考えずに済むよう、購入前に出口シナリオを1本以上描いておくことが重要です。

チェックリスト

  • 売却想定時期と出口時点での築年数・残存耐用年数を試算しているか
  • 出口時点で買主が融資を引けそうな条件かを確認しているか
  • 出口価格の試算(賃料÷還元利回り)を行ったか
  • 売却と長期保有のどちらを前提とした購入かを決めているか
  • 修繕・空室・賃料下落シナリオを複数ケース試算しているか
  • B2-1のDDチェックと組み合わせて物件状態を確認したか

1分で要点整理

「高利回りの地方RC物件を購入する際は、現在の収益性だけでなく、出口時点で誰が・どんな条件で・いくらで買えるかを事前に仮設計してください。出口が描けない物件は、保有中の収益がどれだけ良くても、最終的に値引き売却や塩漬けになるリスクがあります。」

判断基準

  • 出口時点で融資が付きそうな条件 → 売却前提で投資計画を設計できる
  • 出口時点で現金買い前提になりそう → 長期保有前提でのシミュレーションに切り替えて判断する
  • 出口シナリオが描けない → 購入を一旦止め、B3-1「出口戦略の教科書」を参照しながら設計を見直す

よくある質問

Q1. 利回りが高いのに、なぜ業者も銀行も前向きに見えないのか?

A. 業者は売却後の責任を持たないため、現在の利回りを強調します。銀行は「その物件の担保価値(積算評価・収益価格)」と「将来にわたって返済できるか」を見ており、利回りの高さだけでは判断しません。積算評価が低い・エリアの流動性が低い・修繕リスクが高いなどの要因があれば、利回りが高くても融資を絞る場合があります。業者と銀行の「見ている軸」が根本的に異なることを理解しておくことが大切です。

Q2. 積算が弱い物件は、現金買いでなければ成立しにくいのか?

A. 「積算評価が弱い=必ず現金買いでないと買えない」とは一律に言えません。収益評価を重視する金融機関もあり、物件の収益性・借り手の属性・エリアなどによって融資の可否は変わります。ただし、積算評価が低い物件は融資をつけられる銀行の選択肢が狭まりやすく、条件が厳しくなるケースは多いです。どの金融機関にアプローチするか、融資付けの可能性を事前に確認することを推奨します。

Q3. 買うときは安く見えても、売るときに詰む物件はどう見分けるのか?

A. 主な見分け方は以下の通りです。①購入価格に対して積算評価・収益価格の両方が大幅に下回っている。②エリアの成約事例が少なく、流動性が低い。③将来の買主が融資を引きにくい築年数・エリアに該当する。④現在の賃料が市場相場より高く、将来の下落リスクがある。これらが複数重なるほど、出口時に選択肢が狭まりやすくなります。B2-1のDDチェックリストと照合しながら確認することをお勧めします。



用語解説

  • 表面利回り【ひょうめんりまわり】: 年間の家賃収入を物件価格で割った数字。管理費・空室損・修繕費などを含まないため、実際に手元に残る収益より高く出る。「グロス利回り」とも呼ばれる
  • 積算評価【せきさんひょうか】: 土地の評価額と建物の評価額(再建築費×残存耐用年数の割合)を合計した不動産の評価方法。銀行の担保評価として広く使われる
  • 収益還元法【しゅうえきかんげんほう】: 不動産が将来生み出す収益から物件価値を算出する方法。「純収益÷還元利回り」で計算され、収益価格を求める。賃貸用不動産の評価で特に有効とされる
  • 法定耐用年数【ほうていたいようねんすう】: 税法上、建物の種類ごとに定められた使用可能年数。RC造は47年、鉄骨造は34年(骨格材肉厚によって異なる)、木造は22年。銀行の融資期間の上限の目安になることが多い
  • オーバーローン【おーばーろーん】: 物件の積算評価や市場価格を上回る金額を借り入れている状態。担保割れとも呼ばれ、この状態では売却しても残債を返済できない場合がある

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・税務助言・投資助言ではありません。制度、税制、金利、審査条件、各種運用ルールは変更される可能性があります。個別案件については、不動産会社、金融機関、税理士、弁護士等の専門家にご確認ください。


引用元:

  • [1] 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」 – https://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson23/t-page.asp
  • [2] 幻冬舎ゴールドオンライン「地方RC造物件の投資効率が悪いといえる理由」 – https://gentosha-go.com/articles/-/1258
  • [3] 楽待「物件評価、積算vs収益還元」 – https://www.rakumachi.jp/news/practical/214881
  • [4] ハーキュリーズ・リアルティ「不動産の価格根拠を知っていますか?銀行担保評価のやり方とは」 – https://www.hercules-r.co.jp/blog/view/47
  • [5] 不動産投資の嘘「業者の嘘!何も考えずに地方中古RCを買ってしまった悲劇」 – https://daimlar.net/regional-rc-apartment-20191111/

この記事を書いた人

この記事は 櫻井 洸太 が執筆しています。建築・テレビ業界・営業の経験で得たフットワークの軽さを武器に、収益不動産のこれからをご提案していきます。 執筆者紹介はこちら

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