DCR/CCR合格ライン|否決パターンと再挑戦のための改善アクション

融資・投資判断の実務

この記事で分かること

  • DCRは「返済の安全性」、CCRは「自己資金の投資効率」を見る指標で、役割が異なる
  • 融資が落ちる理由はDCRの分子(NOI)が弱いか、分母(返済額)が重いか、どちらかに集約できる
  • 銀行審査では数式だけでなく、レントロール・修繕履歴・法人実態などの資料根拠も見られる
  • 再挑戦前に「分子・分母・自己資金・資料」の4点を整理すると、改善の優先順位がつけやすくなる

知っておきたい用語

  • DCR(Debt Coverage Ratio):家賃から諸経費を引いた純収益(NOI)が、年間の元利返済額の何倍あるかを示す指標。たとえばDCR1.3なら「返済額の1.3倍のNOIがある=返済後に30%の余裕がある」状態。1.0を下回ると収益だけでは返済が賄えないことを意味する。

最終更新日: 2026年03月23日

「表面利回りは悪くないのに、なぜ落ちたのか分からない」——融資否決を経験した投資家の多くが、このように感じています。原因を感覚論のまま放置すると、次の申込も同じ轍を踏むことになります。本記事では、DCR/CCRという数式を使って「なぜ落ちるのか」を可視化し、再挑戦の改善ポイントを整理します。

まず融資の壁の全体像を確認したい方はこちら →〔親Hub記事:融資審査・返済期間・返済ピッチ・出口の全体像〕


  1. DCRとCCRとは何か
    1. DCR=返済安全性を見る指標
    2. CCR=投下自己資本に対する効率を見る指標
    3. 銀行が重視する数値と投資家が見たい数値は少し違う
    4. 落とし穴
    5. チェックリスト
    6. 1分で要点整理
    7. 判断基準
  2. 合格ラインの目安レンジ
    1. DCRはなぜ1.2〜1.3が目安になりやすいのか
    2. CCRはなぜ10〜20%以上が目安として使われやすいのか
    3. 目安は物件種別・金利・期間でズレる
    4. 落とし穴
    5. チェックリスト
    6. 1分で要点整理
    7. 判断基準
  3. なぜ融資に落ちるのか
    1. 分子が弱いケース(NOI不足)
    2. 分母が重いケース(返済額過大)
    3. 自己資金・属性・出口で追加減点されるケース
    4. 落とし穴
    5. チェックリスト
    6. 1分で要点整理
    7. 判断基準
  4. 数式で見る否決パターン
    1. 運営費の過小評価
    2. 返済期間の短縮
    3. 空室・AD・修繕を織り込んでいない
    4. 自己資金不足とLTV過大
    5. 落とし穴
    6. チェックリスト
    7. 1分で要点整理
    8. 判断基準
  5. 再挑戦のための改善アクション
    1. DCRの分母を下げる(ADS削減)
    2. DCRの分子を上げる(NOI改善)
    3. CCRとLTVの折り合いを取る
    4. 落とし穴
    5. チェックリスト
    6. 1分で要点整理
    7. 判断基準
  6. 銀行の減点を、業者資料でどう埋めるか
    1. レントロール・成約賃料・稼働根拠
    2. 修繕履歴・見積書・建物管理資料
    3. 法人実態・金融資産・出口資料
    4. 落とし穴
    5. チェックリスト
    6. 1分で要点整理
    7. 判断基準
  7. 再挑戦前のチェックリスト
    1. 再申込前に直す順番
  8. よくある質問
    1. 用語解説

DCRとCCRとは何か

DCRは「返済安全性」、CCRは「自己資金の投資効率」を測る指標です。どちらも重要ですが、銀行が重視する視点と投資家が重視する視点はずれている部分があり、その差を理解することが融資通過の出発点になります。

DCR=返済安全性を見る指標

DCR(Debt Coverage Ratio)は、ある期間の純営業収益(NOI)を同期間の借入金の元利返済額で割って求める、借入金返済の安全度を測る指標です。計算式は次のとおりです。

DCR(DSCR)= NOI(純営業収益)÷ ADS(年間元利返済額)

DCRが大きいほど借入返済の確実性が増し、デフォルトが起きる可能性が低くなります。一般的には1.3以上を目安と考えます。1.0を下回ると、NOIだけでは返済を賄えない状態を意味します。

NOIとは何かも確認しておきましょう。NOI=賃料等収入 − 空室・滞納損失 − 運営費(PM費/修繕日常費/共用電気水道等)であり、減価償却・金利・税金・元本返済は含みません。表面利回りの計算に使う「満室時賃料」ではなく、実際の空室・運営費を引いた後の数字がNOIです。

CCR=投下自己資本に対する効率を見る指標

CCR(Cash on Cash Return)とは、物件購入時に支払った自己資金(自己資本)に対する年間キャッシュフローの割合を指します。計算式は次のとおりです。

CCR= 税引前キャッシュフロー ÷ 投下自己資本 × 100(%)

CCRは高いほど自己資金を上手く運用できており、10%前後を1つの基準として自己資金の運用状況を検討します。自己資金の回収期間の目安にもなり、CCR10%なら約10年で自己資金を回収できる計算です。

銀行が重視する数値と投資家が見たい数値は少し違う

投資家はCCRを高めたい(=少ない自己資金で高いリターンを得たい)と考えがちです。しかしCCRを高めるために自己資金を絞りすぎると、LTV(融資比率)が高まり、銀行審査では不利になるケースがあります。LTVが高くなればなるほどDSCR(返済余裕率)は低くなります。稼働率の下落や金利上昇などのリスクに対する弾力性が低い、つまりデフォルトの可能性が高くなることを意味します。

銀行が審査で主軸に置くのはDCR(返済安全性)とLTV(融資比率)の組み合わせです。CCRは投資家が投資効率を測るための指標であり、審査の直接的な判断基準ではない場合が多いです。ただし、「自己資金をどれだけ入れるか」はLTVに直結し、結果としてDCRにも影響します。この連鎖を理解することが重要です。

落とし穴

「CCRが高い=良い案件」と判断し、自己資金を極限まで絞ったフルローン・オーバーローン的な申込をしてしまうケースがあります。CCRは高くなりますが、LTVも高まるため審査上は不利になりやすいです。CCRと同時にDCR・LTVも計算する習慣が重要です。

チェックリスト

  • DCRの計算に使うNOIは、表面賃料ではなく空室・運営費控除後の数字か
  • ADSは元金と利息の合計(元利均等返済の場合の年間支払額)か
  • CCRの分子に使うキャッシュフローは、NOIからADSを引いた税引前キャッシュフローか
  • CCRを高めるために自己資金を絞りすぎていないか(LTVとのバランスを確認)
  • DCRとCCRを同時に計算し、双方向で評価しているか

1分で要点整理

DCRは「返済の安全性(銀行視点)」、CCRは「自己資金の効率(投資家視点)」を測る指標です。銀行審査ではDCRとLTVが主軸になりやすく、CCRを上げようとして自己資金を絞りすぎると審査上逆効果になるケースがあります。

判断基準

  • 「DCRとCCRを別々に計算できていない」→ まず両方の計算式を整理する
  • 「DCRは計算しているがLTVを確認していない」→ 自己資金比率とあわせて三角形で確認する
  • 「CCR重視で自己資金を最小化した案件」→ LTVと審査への影響を確認し直す

合格ラインの目安レンジ

DCR・CCR・LTVにはそれぞれ目安とされる水準がありますが、これらは固定値ではなく、物件種別・金利・融資期間の条件によって前後します。「この数値なら必ず通る」という保証はなく、あくまで傾向として理解することが重要です。

DCRはなぜ1.2〜1.3が目安になりやすいのか

DSCRは年間純収益÷借入金年間返済額という式によって算出され、通常では1.2〜1.4程度が目標とされます。1.0を割り込めば、収入を借入金の返済額が上回ることになり、返済ができなくなることを示しています。

1.2〜1.7倍程度が望ましいとされており、1倍を下回ると借入金を返済できない破綻状態にあることを示します。

1.2〜1.3が目安になりやすい理由は、「返済原資に20〜30%の余裕を持たせることで、空室増加・修繕費発生・金利上昇などの予期せぬ事態に対応できるようにする」という考え方が背景にあります。DCR1.0ジャストでは、少し稼働率が下がっただけで返済が厳しくなります。

CCRはなぜ10〜20%以上が目安として使われやすいのか

最初に入れたお金は10年以内(CCR10%以上)で回収できるのが理想ですが、近い数字であれば多少低くても減価償却や立地、売却益等その他の要素に期待できれば買いのケースも多々あります。

CCRの目安は、融資条件・物件利回り・自己資金比率によって大きく変わります。CCR10%未満でも保有目的(長期安定保有か短期回転か)によって許容範囲は異なります。また、自己資金をほぼ入れないフルローンに近い案件ではCCRは高くなりますが、それは「自己資金が少ない分、分母が小さい」からであり、投資リスクが低いことを示すわけではありません。

目安は物件種別・金利・期間でズレる

条件DCRへの影響注意点
金利が高いADSが増える → DCRが悪化金利上昇時のストレステストが重要
融資期間が短い月々の返済額が増える → ADSが増える → DCRが悪化築古・耐用年数超過物件で起きやすい
空室が多いNOIが減る → DCRが悪化業者の満室想定で計算すると実態とズレる
運営費を過小評価NOIが過大になる → DCRが見た目より良くなる審査で見直されると数値が下がる

落とし穴

「業者のシミュレーションではDCR1.3以上になっている」と安心するケースがあります。しかし業者の数字は満室想定・運営費低め・金利が低い固定値で計算されていることが多く、銀行が保守的なNOI・実際の金利・短い融資期間で再計算すると1.0近くまで下がるケースがあります。

チェックリスト

  • NOIを満室想定ではなく、空室ロス・AD(広告料)・修繕費を加味して計算しているか
  • 金利が1〜2%上昇した場合のDCRを試算しているか
  • 融資期間が短縮された場合のADSとDCRを試算しているか
  • 業者のシミュレーション数値を、自分で再計算して確認しているか

1分で要点整理

DCRの目安は一般的に1.2〜1.3程度ですが、物件種別・金利・融資期間によって実態は異なります。業者のシミュレーションをそのまま信頼せず、空室ロス・修繕費・金利上昇ストレスを加えた保守的な数値で計算し直すことが重要です。

判断基準

  • 「業者のシミュレーションしか見ていない」→ 自分で保守的な条件でDCRを再計算する
  • 「融資期間が短く設定されそうな物件」→ 期間が短縮された場合のADSとDCRへの影響を確認する
  • 「空室率が実態より楽観的な数値になっている」→ 稼働率を実態に近づけてNOIを試算し直す

なぜ融資に落ちるのか

融資否決の原因は「物件が悪い」だけではありません。DCRの数式に照らすと、分子(NOI)が弱いか、分母(返済額)が重いか、またはその両方が重なっているパターンに集約できます。さらに数式の外にある自己資金・属性・出口・資料の弱さが追加減点になるケースも多いです。

分子が弱いケース(NOI不足)

表面利回りは良く見えても、次の要素を正しく引いてNOIを再計算すると、実態のNOIは低くなるケースがあります。

  • 管理費(PM費・清掃費・共用部経費)
  • 空室損失(稼働率の現実値・AD広告費)
  • 修繕費の積立見込み(特に築古物件)
  • 固定資産税・火災保険料

銀行の融資審査では、固定資産税や火災保険料、管理費用などは一定の率で値上がりするものと仮定して試算します。業者の提示するシミュレーションより保守的なNOIで銀行が再計算すると、DCRが基準未満に落ちるケースがあります。

分母が重いケース(返済額過大)

NOIは悪くなくても、ADSが膨らんでDCRが悪化するケースがあります。

  • 融資期間の短縮:築古物件や耐用年数の関係で期間が短く設定されると、月々の返済額が増えてADSが大きくなります
  • 金利の上昇:変動金利の場合、金利上昇で利息分が増えADSが膨らみます
  • フルローン・オーバーローン:元金が多いほどADSも大きくなります

自己資金・属性・出口で追加減点されるケース

DCRが基準を満たしていても、以下の要素で審査上の評価が落ちるケースがあります。

  • LTVが高い(自己資金が少ない)
  • 借主の属性が弱い(収入・勤続年数・他の借入)
  • 出口戦略が不明瞭(残債処理の計画がない)
  • 営業エリア外の物件
  • 遵法性の問題がある物件

数式上のDCRが1.2以上あっても、LTVが高くリスクバッファがないと評価される場合、否決になることがあります。不動産投資ローンは「本当に返済できるのか」という点だけでなく、「この物件には投資する価値があるか」「安定した収益を生めるか」などの点も重視されます。

落とし穴

「DCRが1.2以上あったのになぜ落ちたのか」と感じるケースの多くは、自己資金不足によるLTV過大、または資料の根拠不足(後述)が理由であることがあります。DCRだけが否決理由ではないことを念頭に置く必要があります。

チェックリスト

  • NOIに空室ロス・修繕積立・管理費・固都税を全て織り込んでいるか
  • 融資期間が短縮された場合のADS増加を試算しているか
  • LTV(借入額÷物件価格)を計算し、自己資金比率が審査上問題ないか確認しているか
  • 他の借入(既存ローン・カードローン等)が審査に影響していないか確認しているか
  • 対象物件が金融機関の営業エリア内かどうか確認しているか

1分で要点整理

否決の原因はDCRの分子(NOI)が弱いか、分母(ADS)が重いかのどちらか、またはその両方です。それに加えて、LTV・属性・出口・資料根拠の弱さが追加減点になります。「表面利回りは良いのに落ちた」という場合は、NOIを保守的に再計算し、LTVも確認することから始めてください。

判断基準

  • 「表面利回りは高いのにDCRが基準未満」→ NOIを保守的に再計算し、運営費・空室ロスを確認する
  • 「DCRは問題なかったのに否決された」→ LTV・属性・資料根拠・エリアの問題を確認する
  • 「築古物件で融資期間が短くなった」→ ADS増加がDCRに与える影響を試算する

数式で見る否決パターン

否決につながりやすいパターンを、DCRの分子(NOI)と分母(ADS)の観点から整理します。

運営費の過小評価

業者のシミュレーションでは運営費を満室賃料の10〜15%で試算していることがありますが、実態は管理費・修繕費・固都税・保険料・空室AD費などを加えると20〜30%を超えることも珍しくありません。NOI=賃料収入 − 運営費なので、運営費が過小評価されているとNOIが実態より高く見え、DCRも良く見えます。銀行審査では独自の運営費率で再計算するため、実態よりDCRが下がるケースがあります。

返済期間の短縮

築年数が法定耐用年数を超えている物件に対して、金融機関は慎重な姿勢を取ります。物件の築年数が法定耐用年数を超えていると、貸付金を回収できないと判断するためです。融資期間が短くなるとADSが急増し、NOI自体は悪くなくてもDCRが一気に悪化するケースがあります。同じNOIでも融資期間が20年から10年に短縮されると、月々の返済額は大きく増えます。

空室・AD・修繕を織り込んでいない

業者の資料が満室想定・修繕費ゼロ・AD費なしで作られている場合、実態のNOIとの乖離が生まれます。銀行の融資審査では、想定NOIではなく実際のNOIに基づいてDSCRが判断されます。銀行が実態に近い数値で再計算した結果、NOIが低下しDCRが基準未満になるケースがあります。

自己資金不足とLTV過大

LTVは借り入れ依存度を指す指標で、数値が低ければ低いほど借り入れ負担は小さくなります。物件購入は頭金を2割、残りの8割をローンの比率で実行するのが最低ラインと言われています。自己資金を絞りすぎるとLTVが上がり、DCR上の数字は計算できても审査全体で評価が下がるケースがあります。

落とし穴

複数の否決パターンが重複していることが多く、「運営費を正確に反映したらNOIが下がって、さらに融資期間も短くなった」という複合的な悪化が実際の否決要因になるケースがあります。一つだけ改善して再申込しても、別のパターンが残っていると同じ結果になることがあります。

チェックリスト

  • 運営費は満室賃料の何%で計算しているか(20〜30%以上を目安に再確認)
  • 空室ロス率は実態・エリア相場に近い数値か(満室想定を使っていないか)
  • AD費(入居付け時の広告料)を年間費用として組み込んでいるか
  • 修繕積立を費用として織り込んでいるか
  • 自己資金比率(1 − LTV)を計算し、融資比率が過大になっていないか確認したか

1分で要点整理

否決パターンの多くは「運営費を甘く見たNOI過大評価」「融資期間短縮によるADS急増」「空室・AD・修繕の未加算」「LTV過大」の組み合わせです。業者シミュレーションをそのまま使わず、自分で保守的に再計算することが重要です。

判断基準

  • 「業者の資料をそのまま金融機関に提出した」→ NOIと運営費の内訳を自分で確認・再計算する
  • 「築年数が古く融資期間が短くなりそう」→ 期間短縮後のADSとDCRを先に試算する
  • 「自己資金は少なめで申し込んだ」→ LTVが高くないか、自己資金を増やした場合のDCRも比較する

再挑戦のための改善アクション

否決の原因が特定できたら、改善の優先順位をつけて再挑戦の準備を進めます。DCRの分子を上げるか、分母を下げるか、LTVとの折り合いを取るか、の3方向から整理します。

DCRの分母を下げる(ADS削減)

  • 自己資金を増やしてLTVを下げる:借入元金が減るのでADSが下がります
  • 金利交渉・他の金融機関での打診:金利が下がるとADSの利息部分が減ります
  • 融資期間の延長交渉:耐用年数・年齢制限の範囲内で期間を伸ばすと月々の返済が減ります

ただし、融資期間延長とバルーン返済については、10年後の再審査リスクとのトレードオフを含むため、別途検討が必要です。

DCRの分子を上げる(NOI改善)

  • 空室率を引き下げる:賃料設定の見直し・リーシング強化・物件整備
  • 運営費を適正化する:管理会社の変更・保守契約の見直し・無駄なコスト削減
  • その他収入を加える:駐車場・駐輪場・看板収入など

ただし、審査申込時点では「改善後のNOI」を使うことはできないケースが多く、実績として示せる期間が必要です。改善着手→実績積み上げ→資料整備→再申込という順番が基本です。

CCRとLTVの折り合いを取る

CCRを一定水準に保ちながらLTVを下げるには、自己資金の投入量と物件の利回りのバランスが重要です。自己資金割合を低く抑えることでCCRは高くなりますが、安全性の指標(BER)も同時に確認する必要があります。自己資金割合が低い場合、CCRは高くなるが安全性のリスクも高まります。

CCRを高めることより、DCRと LTVを審査基準に合わせることを優先するのが再挑戦時の基本姿勢です。

落とし穴

「CCRが下がっても構わないから自己資金を増やした」という判断は、審査には有利になりますが、投資効率は落ちます。どの数字を最優先に改善するかは、保有方針・手持ち資金・物件特性によって変わります。一つの数値に最適化しすぎず、DCR・CCR・LTVをセットで評価することが重要です。

チェックリスト

  • 自己資金を1割・2割・3割入れた複数ケースでDCR・CCR・LTVを比較したか
  • 空室率・運営費を保守的に設定した上でDCRが目安を上回るか確認したか
  • 金利ストレス(+1〜2%)をかけた場合でもDCRが大きく崩れないか試算したか
  • 出口時の売却価格レンジと残債の関係を保守的に試算したか

1分で要点整理

改善の方向は「DCRの分母を下げる(自己資金投入・期間延長)」「DCRの分子を上げる(NOI改善・空室対策)」「LTVの折り合いを取る」の3軸です。どれを優先するかは物件・手持ち資金・保有方針によって変わります。まず否決パターンを特定し、そこから改善優先順位を決める順番が有効です。

判断基準

  • 「NOIの計算が甘かった」→ 空室・運営費を保守的に修正し、DCRを再計算する
  • 「ADS(返済額)が重かった」→ 自己資金追加または融資期間延長の可能性を確認する
  • 「LTVが高かった」→ 自己資金比率を高めた複数ケースで再シミュレーションする

銀行の減点を、業者資料でどう埋めるか

DCRとLTVの数値が改善されても、審査では「その数値を裏付ける資料根拠」が求められます。数式だけでなく、エビデンスとなる資料の整備が再挑戦の精度を左右します。

レントロール・成約賃料・稼働根拠

金融機関が融資審査時に物件の収益性のエビデンスとして、レントロールの提出を求めるケースが増えています。レントロールの内容が悪い物件は、融資が通らないリスクも高くなります。

特に注意が必要なのは、レントロール上の「空室の想定家賃」が実際の成約賃料と乖離していないかという点です。空室の想定家賃は、原則として同じタイプの部屋で直近に契約がされている家賃と同額で計算します。想定家賃が相場より大きく高い場合は注意が必要です。

修繕履歴・見積書・建物管理資料

修繕履歴や大規模修繕の見積書は、物件の維持管理状態を示す根拠になります。資料がない場合、銀行側は「管理が行き届いていない可能性がある」という評価をするケースがあります。図面・設備台帳・管理会社との契約書なども、物件の実態を示す補足資料として有効です。

法人実態・金融資産・出口資料

法人で申込む場合、直近の決算書と法人の実態(役員・事業内容・事業収支)が審査資料になります。個人の場合は、源泉徴収票・確定申告書・金融資産残高・既存借入の一覧が基本資料です。出口として売却を想定する場合は、売却価格のレンジ試算と残債との比較資料も有効です。

落とし穴

「数字は揃っているが資料根拠が薄い」という状態での申込は、審査担当者に「数字の信頼性が低い」と判断される可能性があります。特にレントロール上の賃料が実際の成約賃料と乖離していたり、修繕費の見積もりが欠けていたりすると、NOIの計算根拠に疑念が生じます。

チェックリスト

  • レントロールは最新かつ実態に即した数字になっているか(想定賃料が相場と乖離していないか)
  • 空室の想定賃料が、同類型の直近成約賃料に近い水準になっているか
  • 修繕履歴・工事完了報告書・見積書を揃えているか
  • 法人の場合、実態のある事業収支と決算書が揃っているか
  • 個人の場合、源泉徴収票・金融資産残高・既存借入一覧が揃っているか
  • 出口(売却シナリオ)の価格試算と残債の関係を資料化しているか

1分で要点整理

審査では「数値の根拠を資料で説明できるか」が重要です。DCRが1.2以上でも、その根拠となるレントロール・修繕履歴・成約賃料の裏付けが弱ければ、数値の信頼性が落ちます。「数字」と「資料」をセットで準備することが、再挑戦の精度を高めます。

判断基準

  • 「レントロールが古い・想定賃料が甘い」→ 最新の成約事例を確認し、実態に近い数字に修正する
  • 「修繕履歴が整っていない」→ 入手できる範囲で記録を整理し、見積書等を補足する
  • 「法人の実態資料が薄い」→ 決算書・事業収支・役員情報を整理する

再挑戦前のチェックリスト

再申込の前に、「どこを改善したか」を自分で言語化できる状態にすることが重要です。数式・資料・条件の3方向から確認します。

再申込前に直す順番

  1. 否決パターンの特定:分子(NOI)が弱いのか、分母(ADS)が重いのか、LTVが高いのか、資料根拠が薄いのかを整理する
  2. NOIの保守的再計算:空室ロス・運営費・AD費・修繕積立を全て加えてNOIを計算し直す
  3. ADSとDCRの再試算:自己資金を1割・2割・3割入れた複数ケースでDCRを試算する
  4. ストレステスト:金利+1〜2%、空室率+10%でもDCRが大きく崩れないか確認する
  5. 資料整備:レントロール・修繕履歴・成約賃料根拠・財務資料・出口試算を揃える
  6. 候補金融機関の確認:営業エリア・物件種別・属性との相性を確認する

よくある質問

Q1. 表面利回りが高い物件なのになぜDCRが低くなるのですか?

A. 表面利回りは「満室時の賃料÷物件価格」で計算されており、空室損失・管理費・修繕費・固定資産税などの運営費が一切引かれていません。DCRの分子となるNOIはこれらを全て控除した後の数字です。表面利回りが8%でも、空室・運営費を引いたNOI利回りが4〜5%程度になることは珍しくなく、さらに融資期間が短くてADSが重い場合にDCRが1.0を割り込むケースもあります。「表面利回りが高い=DCRが高い」ではないことを理解しておくことが重要です。

Q2. 否決後、どのくらいの期間を空けて再申込すべきですか?

A. 一般的には、否決の原因を特定・改善したうえで再申込するのが基本です。原因の改善なく短期間に複数の金融機関に申込むと、信用情報機関に申込履歴が記録されるため審査上不利になる可能性があります。改善内容(自己資金の追加・資料整備・物件条件の変更など)が揃ってから、改善の根拠を示せる状態で申込む方が再挑戦の精度は上がります。具体的な期間については融資相談の中で確認することをお勧めします。

Q3. CCRを高くしたいと思っているのですが、そのために自己資金を絞っても問題ありませんか?

A. CCRは「自己資金が少ないほど高くなる」性質を持っています。しかし、自己資金を絞りすぎるとLTV(融資比率)が上がり、銀行審査での評価が下がるケースがあります。また、金利上昇・空室増加などのリスクが発生した際のバッファも減ります。CCRを高めることよりも、DCRを審査基準に合わせ、LTVを適切な水準に保つことを優先するのが、審査通過の観点からは基本です。CCRの最大化は、DCR・LTVのバランスが取れた上での次のステップとして考えることをお勧めします。


用語解説

  • DCR(DSCR)【でぃーしーあーる】: Debt Coverage Ratio(またはDebt Service Coverage Ratio)の略。NOI(純営業収益)÷ ADS(年間元利返済額)で計算する返済安全性の指標。1.0未満だと収益だけでは返済が賄えない状態を意味し、一般的に1.2〜1.3以上が目安とされる。金融機関が融資審査でLTVとともに重視する。
  • NOI【えぬおーあい】: Net Operating Incomeの略。年間賃料収入から空室損失・運営費(管理費・修繕費・固都税・保険料等)を引いた純営業収益。減価償却・金利・元本返済・所得税は含まない。DCRの分子になる数字であり、表面利回りの計算に使う満室賃料とは異なる。
  • ADS【えーでぃーえす】: Annual Debt Serviceの略。年間の元利返済額合計。元金返済分+利息の合計であり、DCRの分母になる。融資期間が短いほど、また金利が高いほどADSは大きくなり、DCRが悪化する。
  • LTV【えるてぃーぶい】: Loan to Valueの略。借入額÷物件価格で計算する融資比率。LTVが高いほど自己資金比率が低く、金融機関からはリスクが高い案件と判断されやすい。一般的に80%以下(自己資金比率20%以上)が目安とされるが、物件・金融機関の類型によって異なる。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・税務助言・投資助言ではありません。制度、税制、金利、審査条件、各種運用ルールは変更される可能性があります。DCR/CCR/LTVの目安数値は各金融機関の判断基準を保証するものではありません。個別案件については、不動産会社、金融機関、税理士、弁護士等の専門家にご確認ください。


引用元:

この記事を書いた人

この記事は 櫻井 洸太 が執筆しています。建築・テレビ業界・営業の経験で得たフットワークの軽さを武器に、収益不動産のこれからをご提案していきます。 執筆者紹介はこちら

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