収支の見方──表面利回り・実質利回り・NOI・CFの違いを整理する

はじめての収益不動産

この記事で分かること

  • 表面利回りと実質利回りの「役割の違い」が分かる
  • NOIとキャッシュフローの関係が整理できる
  • 物件資料の数字で見落としやすい費用が分かる
  • 概要書を見たときの最低限のチェック項目が持てる

知っておきたい用語

  • NOI(純営業収益):家賃収入から管理費・税金・修繕費などの運営費を引いた「物件そのものの稼ぐ力」のこと。お店の売上から仕入れ・家賃・人件費を引いた”営業利益”に近いイメージです。

最終更新日: 2026年02月13日

表面利回りと実質利回り──役割が違う2つの数字

表面利回りと実質利回りは「どちらが正しいか」ではなく、使う場面が異なります。表面利回りは物件をざっくり比較するための”入口のフィルター”、実質利回りはその物件の収益性をより現実的に見るための指標です。表面利回り年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100

  • 経費を一切含まない、最もシンプルな数字
  • 物件ポータルサイトや広告に掲載されるのは、ほとんどがこの表面利回り
  • 物件を大量に比較して候補を絞る段階で使う

実質利回り(NOI利回り)(年間家賃収入 − 年間運営費)÷(物件価格 + 購入時の諸費用)× 100

  • 管理費・修繕費・固定資産税・保険料などの経費を差し引いた数字
  • 表面利回りよりも実態に近い収益性を示す
  • ただし「運営費に何を含めるか」の定義が統一されていないため、比較する際は内訳の確認が必要

> 覚え方:表面利回りは”見た目の数字”、実質利回りは”中身を開けた数字”。見た目が良くても中身が伴わないことがあるので、必ず両方を確認してください。


NOIとキャッシュフロー──「物件の実力」と「あなたの結果」

NOIとキャッシュフロー(CF)は似ているようで意味が違います。NOIは「物件そのものの収益力」、CFは「あなたの条件での手残り」です。NOI(Net Operating Income = 純営業収益)年間家賃収入 − 空室損失 − 運営費 = NOI

  • 借入の返済を含まない、物件の”素の実力”
  • 誰が買っても同じ条件で計算できるため、物件同士の比較に向いている
  • 減価償却費や借入の利息は含めない

キャッシュフロー(CF = 手残り)NOI − 年間ローン返済額 = 税引前キャッシュフロー

  • 融資を使う場合、金利・返済期間・自己資金の割合によってCFは大きく変わる
  • 同じ物件でも、買う人の融資条件が違えばCFは異なる

条件分岐で考える

購入方法NOICFの意味
現金購入(借入なし)家賃 − 運営費NOI ≒ CF(返済がないのでほぼ同じ)
融資あり家賃 − 運営費NOI − 返済額 = CF(返済の重さで変わる)

> 営業現場でよく聞く表現:「表面利回りは”入口のフィルター”、NOIは”物件の実力”、CFは”あなたの条件での結果”」──この3段階を意識しておくと、数字の読み方がブレにくくなります。


“隠れコスト”の代表例──見落としやすい順に整理

物件資料の利回りには含まれていない費用が多くあります。これらを見落とすと、想定と実際の収支にズレが生まれます。以下は代表的な費用です(物件により有無が異なるため、すべてが発生するとは限りません)。

毎月・毎年かかる運営費

費用項目概要目安(あくまで一般的な例)
管理委託費賃貸管理会社への報酬家賃の3〜7%程度
修繕費(小修繕)設備故障・退去時の原状回復など退去1件あたり数万〜数十万円
固定資産税・都市計画税毎年課税される不動産保有税評価額に応じて変動
火災保険・地震保険建物への損害リスクへの備え年間数万円程度
入居者募集費広告料・仲介手数料地域慣行により異なる
共用部の光熱費・清掃費一棟物件の場合に発生規模による

いつか来る大きな費用(資本的支出)

  • 屋根・外壁の大規模修繕
  • 給排水管・エレベーターの更新
  • 給湯器・エアコンなどの設備交換

これらは毎月かかるわけではありませんが、10〜15年単位で発生する可能性がある費用です。運営費とは別に「いつか来る費用」として頭に入れておく必要があります。購入時の一時費用

  • 仲介手数料、登記費用、不動産取得税、融資事務手数料など
  • 物件価格の7〜10%程度が目安とされることが多い

> これらの費用を加味して初めて、「本当にいくら残るか」が見えてきます。


初心者がやりがちな誤解──数字の罠とその回避策

利回りやCFの数字は、前提の置き方ひとつで大きく変わります。以下は、初心者がはまりやすい代表的な誤解です。🔸 落とし穴(あるある)

  • 満室想定の家賃を”確定収入”として計算する → 実際には空室・退去が起きるため、稼働率を織り込む必要がある
  • 表面利回りを実質利回りと混同する → 経費を引いていない数字で判断すると、実態より良く見える
  • 修繕費をゼロで置く → 築年数が経つほど修繕は避けられない。ゼロ想定は非現実的
  • 固定資産税を見落とす → 年額なので月の収支表に入れ忘れがち
  • CFがマイナスでも「利回りが高いからOK」と判断する → 利回りが高くても手元からお金が出ていく状態は持続しにくい
  • 一時費用(取得費)を除外して利回りだけで比較する → 同じ利回りでも初期費用が違えば投資効率は異なる

🔸 チェックリスト(物件の収支を確認するとき)

  1. 記載の利回りは「表面」か「実質」か
  2. 家賃は「満室想定」か「現況」か
  3. 管理委託費はいくらか(家賃の何%か)
  4. 固定資産税・都市計画税の年額はいくらか
  5. 修繕履歴はあるか、直近で大きな修繕は予定されているか
  6. 原状回復・募集費はどの程度見込むか
  7. 共用部の光熱費・清掃費は発生するか
  8. 火災保険・地震保険の年額はいくらか
  9. 融資を使う場合、返済額を引いたCFはいくらか
  10. 購入時の諸費用(仲介・登記・取得税等)の総額はいくらか

🔸 1分で要点を整理──不動産会社に確認するときの言い方> 「この物件の利回りは表面ですか、実質ですか? 実質の場合、運営費に何を含んでいますか? 固定資産税の年額と、直近の修繕履歴、今後の大規模修繕の見通しも教えてください。融資を使う場合の返済込みでCFがいくらになるか、シミュレーションをいただけますか?」このように聞けば、表面利回りの数字だけで判断せず、実態に近い収支を確認できます。


よくある質問

Q: 「表面利回り何%なら買い」という基準はありますか?
A: 一律の基準はありません。表面利回りが高くても、経費が大きい物件や空室リスクの高い物件は実質利回りが低くなります。エリア・築年数・構造・融資条件によって「適正な水準」は異なるため、表面利回りだけでなくNOIやCFまで確認したうえで判断することが重要です。

Q: CFが少しマイナスでも、家賃が入るなら大丈夫ですか?
A: CFがマイナスということは、毎月手元からお金を持ち出している状態です。それが一時的なもの(修繕の一時費用など)なのか、構造的に返済が収入を上回っているのかで意味が変わります。構造的なマイナスの場合、空室や金利上昇が重なるとさらに悪化する可能性があるため、慎重な検討が必要です。

Q: 修繕費は毎月積み立てるものですか?
A: 区分マンションでは管理組合の修繕積立金として毎月徴収されるのが一般的です。一棟物件の場合はオーナー自身で積み立てるか、発生時に対応するかの判断になります。いずれにしても「修繕費ゼロ」で運営し続けることは現実的ではないため、何らかの形で備えておく必要があります。


まとめ

収支の見方は「表面利回り → 実質利回り → NOI → CF」の順に精度が上がっていきます。表面利回りは入口の目安、NOIは物件の実力、CFはあなたの融資条件を反映した結果です。物件を見るときは、ポータルサイトの表面利回りだけで判断せず、運営費・修繕費・税金などの”隠れコスト”を確認する習慣をつけてください。収支の理解ができたら、次は融資と出口を含めた全体の判断に進みましょう。


【用語解説】

  • 表面利回り【ひょうめんりまわり】: 年間家賃収入を物件価格で割ったもの。経費を含まないため”見た目の数字”。物件を大量に比較して候補を絞る段階で使う指標です。
  • NOI【エヌオーアイ】: Net Operating Incomeの略で、家賃収入から運営費(管理費・税金・修繕費・保険料など)を引いた純営業収益。借入返済を含まないため、物件そのものの収益力を示します。
  • キャッシュフロー【きゃっしゅふろー】: NOIからローン返済額を差し引いた、手元に残るお金。同じ物件でも融資条件(金利・期間・自己資金割合)が違えばCFは変わります。
  • 原状回復【げんじょうかいふく】: 入居者が退去した際に、部屋を貸し出せる状態に戻すための工事・費用のこと。経年劣化分はオーナー負担、入居者の故意過失分は入居者負担が原則です。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・税務助言・投資助言ではありません。制度や税制、金利、各種条件は変更される可能性があるため、最新情報は公的機関・金融機関・専門家にご確認ください。


引用元:

  • [1] 全日本不動産協会「不動産投資における収益率の測り方」 – https://www.zennichi.or.jp/law_faq/不動産投資における収益率の測り方/
  • [2] 日本FP協会「不動産投資における利回りの意味」 – https://www.jafp.or.jp/know/info/column/20220513.shtml
  • [3] 野村不動産ソリューションズ「表面利回りとは?実質利回りとの違いや計算方法をわかりやすく解説」 – https://www.nomu.com/pro/contents/knowhow/20251021.html
  • [4] 大和財託「営業純利益(NOI)とは?」 – https://yamatozaitaku.com/column/realestate-investment/営業純利益noiとは/
  • [5] 東急リバブル「不動産投資の基礎:表面利回りと実質利回りのよりシビアな計算方法」 – https://www.livable.co.jp/fudosan-toushi/propertista/learn/index04.html

この記事を書いた人

この記事は 櫻井 洸太 が執筆しています。建築・テレビ業界・営業の経験で得たフットワークの軽さを武器に、収益不動産のこれからをご提案していきます。 執筆者紹介はこちら

タイトルとURLをコピーしました